書評


ケープタウン決意表明書評  (鎌野直人:関西聖書神学校 学監)   

 

 2010年10月に南アフリカのケープタウンでもたれた第三回ローザンヌ世界宣教会議から生み出されたケープタウン決意表明がついに日本語に訳されました。同じローザンヌ運動から生み出されてきたローザンヌ誓約が福音的な教会による宣教のロードマップとなってきたように、本決意表明も21世紀はじめを生きる教会の宣教の道しるべとなるでしょう。
 決意表明は二部構成(前半は信仰告白、後半は行動への呼びかけ)でまとめられています。後半を読むと、ケープタウンでの会議で取り上げられたすべての課題を知ることができます。多元主義、職場、メディア、芸術、先端技術、公共空間、民族紛争、貧困、人身売買、障がい、気候変動、他宗教、迫害、ディアスポラ、宗教的自由、未伝グループ、聖書飜訳、口述文化、リーダー養成、都市、子ども、祈り、性と結婚、権力、成功、繁栄の福音、協力、男女、神学教育。百花繚乱的だという批判も聞こえてきそうです。
 しかし、なぜ、教会は数多くの課題に取り組むように招かれているのでしょうか。それは「愛」をその枠組みに用いている信仰告白を読む時に明らかになります。「神の愛は神のすべての被造物に及ぶ。私たちも、神と同様にすべての領域において、神の愛を反映するような仕方で、愛することを命じられている」(14頁)。すべての被造物におよぶ神の愛ゆえに、そして、神の福音に表されている「全被造物の究極的和解」という神の目的(33頁)、全宇宙に対する計画のゆえに、全教会にはこれらの課題に取り組む使命が与えられているのです。
 神の愛と神の福音の広がり、そして取り組むべき課題の広がりを考える時、本決意表明は現代の教会への神からの挑戦と受けとめるべきです。その挑戦に応えるために、東日本大震災の被災地という現場を始め、世界のあらゆる現場で生き、歩むと共に、本決意表明を教会や神学校で学ばれてはいかがでしょうか。

 

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